
最新情報
【実務視点】ストックオプション/RSUの設計における注意点と実例
2025.06.05
企業向け

― 優秀人材に響くインセンティブとは?
「ストックオプションは付けています」
こうした企業の説明を受けた際、私たちがまず確認するのは「その設計が本当に候補者にとって魅力的かどうか」です。
近年、エグゼクティブやハイレイヤー層の採用において、SO(ストックオプション)やRSU(譲渡制限付き株式)は欠かせない報酬要素になっています。しかし、その設計や説明が曖昧だと、むしろ不信感を与えることも少なくありません。
本稿では、ストックオプションおよびRSU設計における注意点と、弊社が実際に支援した採用事例を踏まえ、経営者が知っておくべきポイントを解説します。
1. 候補者が最も気にするのは「価値の見える化」
候補者がSOやRSUに期待するのは、「いつ」「どのような条件で」「いくらになるのか」という明確なリターン設計です。
しかし実際には、以下のような曖昧さが壁になります:
- 権利行使価格の根拠が不明
- Exit(IPOやM&A)の時期や条件が説明されない
- 税務インパクトの理解が不十分
弊社が支援したPEファンド投資先では、最初に提示されたSO条件に候補者が不安を抱きました。原因は「具体的なシナリオ」が欠如していたこと。
その後、私たちが企業側と連携し、Exitタイミング、想定株価、行使条件をモデルケースとして可視化したことで、候補者の納得感が高まり、入社に至りました。
2. SOとRSUの違いを正しく理解・説明できているか
両者の違いは以下の通りです:
■ ストックオプション(SO)
- 将来、一定の価格で株式を買える権利
- 行使価格、行使期間、譲渡制限などの条件次第で価値が大きく変動
■ 譲渡制限付き株式(RSU)
- 業績や在籍年数に応じて株式を付与
- キャッシュ化の時期や条件が明確になりやすく、候補者に安心感
弊社の支援先では、創業者が「SOがあるから十分だろう」と考えていたが、候補者側は「RSUであれば成果に対する対価としての納得感が得られる」と判断し、制度を見直した結果、ハイクラスの採用成功に繋がりました。
3. インセンティブの“構造”より“意図”を伝える
SOやRSUは、単に金銭的リターンを目的としたものではありません。
重要なのは、「この報酬があなたの役割とリンクしている」ことが伝わるかどうかです。
- どの成果に対して付与されるのか?
- 経営と同じ目線でリスクを取る意思を評価しているのか?
- 成果が出たとき、一緒にリターンを享受したいというメッセージがあるか?
弊社が支援したIT企業では、社長が面談時に「このSOは、あなたがこの組織をスケールさせたときの“証”です」と語りかけ、候補者が深く共感。実際にその後、シリーズBでの資金調達成功に貢献し、経済的にも組織的にも大きなリターンを得る結果となりました。
4. トレンド:「SOだけ」から「複合設計」へ
近年では、以下のような複合的なインセンティブ設計が増えています:
- ベース給与+ボーナス+SO+RSU
- RSUと成果連動報酬を組み合わせたストックユニット
- 退任時の貢献評価に応じた追加付与制度(リテンション設計)
特にミドル~ハイレイヤーの人材にとっては、「成果の一部をストックで受け取る」ことがスタンダードになりつつあります。
◆ 最後に
SOやRSUは、優秀人材を惹きつけ、定着させる強力な手段です。
しかしその効果は、「設計」だけでなく「説明」や「共感形成」によって左右されます。
私たちは、単なる制度提案ではなく、候補者との接点でどのように語るべきか、どこまで開示すべきか、といった実務面まで含めてサポートしています。
「制度はあるのに、響かない」と感じている方は、ぜひご相談ください。

Contact
お問い合わせはこちら